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私たちの仕事は、それぞれの方が持つ希望や悩み、規模や予算を、建築が持つチカラでより豊かな方向へと変えていくことです。
毎回違う条件の中、コミュニケーションをとりながら新しい日常や新しい風景を提案していくことが、設計の楽しさだと考えています。

concept
□abanba(エイバンバ)は2010年に設立し、横浜の関内外地区を拠点に、番場俊宏と番場絵里香、そして4人のスタッフを中心に活動しています。
設計では、規模や種類に応じて、パートナー的に動いてくれている事務所のOBや、前職時代の後輩たちに参画してもらいながら、構造設計や設備設計、ランドスケープデザインなどの協力事務所と共にプロジェクトに取り組んでいます。
□主観的輪郭の重なり
どんなプロジェクトも、関わるメンバーの意見が、なるべく等価な状態からスタートしたいと考えています。まずは、施主からの要望や敷地や法規といった共通の条件のインプットをもとに、プロジェクトに参加するメンバーが、それぞれ目指すべき建築のありかたを持ち寄ることから検討を開始します。それはいわば異なる立場、視点から浮かび上がる、建築の主観的輪郭であり、設計のプロセスでは、個々の精度をあげながら、互いに重ね合わせ、最終的な建築の姿へと少しずつ調整を繰り返していきます。そこには、できる限り早い段階で施工も参加できるようにしています。特に「アーキビルダーズ」のメンバーとして取り組む別荘や、「アヘッド」との協働で取り組む動物病院の設計の際には、プロジェクトのスタート時点から施工の意見を交えて設計を進めています。
□建築とその周囲
こうした設計への取り組み方を実践する上で、私自身はなるべく偏らず、様々な価値観に対してフラットな状態にありたいと考えています。「開港5都市景観まちづくり会議」に参加することで、活動の拠点である横浜以外の都市との意見交換を行ったり、「女将旅」というフリーペーパーを発行し、いつもとは違う形でのアウトプットを行ったり、展覧会の会場構成で、アーティストやファッションデザイナーの考えに触れたり、Airbnbでチュウカガイインの運営をしてみたりと、常に建築の設計と、その周囲の活動を並行して行なう中で、自分自身を建築家としてだけではなく、様々な立場に置くように心がけています。
□多重解像度の建築
こうした考え方は、大学院で解像度をテーマにした論文を書いて以来続いています。当時、解像度(dpi)という単位は、デジタルカメラはじめとした機器の普及に伴い、急速に身近なものとなり、新たな価値観が社会に浸透していくのを感じていました。そうしたなかで、論文では、一般的な均質にピクセルが並ぶデジタル画像を、部分ごとに最適な解像度のピクセルに置き換えた画像=多重解像度画像をつくり、それを元に景観の分析を行いました。この論文を通じて、高解像度の画像(それによって映し出される風景)の価値が高いわけではなく、目的に合わせた解像度の選択や、ピクセルの密度のバランスこそが、大切なのではないかという考え方を持つようになりました。
設計をしていると、日々あらたな基準や評価の指標が生まれています。特に環境の分野では、BELSやCASBEEに代表されるような建築の性能に関わる指標が注目されています。こうした指標との向き合い方として、常に最高値を実現する技術的な方法を身につけながらも、プロジェクトの特性に応じて、適切なスペックを選択できることが設計者にとって大切なことだと考えます。
□いたずらに高解像度であることだけに価値を見出すのではなく、時には低解像度の画像のほうが美しく感じることがあるように、建築においても、様々な価値観の中で適切な解像度によって構成された。そんな多重解像度の建築を設計していきたいと考えています。